sohramame’s 「吉備の古代を想う」吉備氏・尾張氏

岡山(吉備)の古代史についてですが、上古代日本史全般についても書いてます

クニオシ(孝昭天皇)のお話

@kmichi13 2018年9月22日
第6代孝昭天皇のお話です。スキトモの子で、大人になるまでカエシネが代行の王を務め、成人後王になった人です。記紀の記述と比べて、孝安天皇孝昭天皇の順序、和風諡号は入れ替わってます。会話・心情は創作ですが設定・背景は事実だと考えてます。

#クニオシ 1
クニオシは父スキトモの顔を知らない
というか記憶にない
病気やけがで死なないよう
母、太真若姫に大切に育てられた
おかげで健康に大人になれたが
父を知らずに、王になれ!と言われても
ピンとこないものがあった
カエシネがずっと
王を続けてくれてもよかったのに
とも思った

#クニオシ 2
そうは言っても王になった以上
宮臣は色々求めてくる
判断したり命令したりするのは苦手では無いが
外に出て外交や戦や交渉するには
経験が足りなかった
しかし
そこはカエシネの子・孫たちが補佐してくれる
2年もするとクニオシは
政治を彼らに殆ど任せるようになり
自身は宮に籠った

#クニオシ 3
クニオシは宮を
カエシネの秋津島宮の近く
葛城掖上に造った
むろん宮臣が勤めやすいの第一だが
母の里三輪山にも行きやすいとこだった
先王が国を固めたので
カエシネの子たちは
奈良盆地の北半分を征服すべく
徐々に北への侵攻を強めた
クニオシは
頼もしいことだ
とそれを見ていた

#クニオシ 4
先王カエシネの子・イズキヒコは
北への進軍の隊長だ
クニオシ様、たまには進軍の視察をしませんか?
と誘っても出たがらない
怖いのだ
だが宮の近く西の葛城の方には
よく出かける
どこに行ってる?
と宮臣が後をついていくと
美しい女性が出迎え館の中に消えた
ヨソ姫という人の家だった

#クニオシ 5
クニオシは王になると同時に
これまでと同様
磯城一族から妃をあてがわれた
名を細姫(クワシヒメ)という
しかしクニオシは王となる以前から
葛城の尾張一族の女
ヨソ姫と偶然出会い恋に落ち
子を設けていた
事実を知り仕方なく
磯城の棟梁・太真若彦は
ヨソ姫を妃として宮に迎え入れた

#クニオシ 6
クニオシはヨソ姫との間に男子を
細姫との間にも男子を儲けた
当然ヨソ姫との子が年上なので
先に王になる資格がある
磯城一族の女から生まれていない
初の王になるかも
太真若彦は
それでいいのか?と自問した
いっそ、その子を暗殺しようか?
その時オキツヨソという
ヨソ姫の兄が現れた

#クニオシ 7
オキツヨソは太真若彦に言った
磯城さんばかりズルいじゃないですか
イワレヒコの血をがっつり取り込んで
吾達の先祖タカクラジ(高倉下)も
イワレヒコに貢献してるんですよ
ここらで吾達の血も混ぜてくださいな
真相を突かれて太真若彦は
ぐぬぬ、と何も言えなかった

#クニオシ 8
まぁ次の王は
長男だしヨソ姫の子が継いで
その次に細(クワシ)姫の子が継いでくれればよいか
と太真若彦は呟く
あまり磯城一族独占に
拘らない方がいいな
と一人合点して
オキツヨソの言に従うことにした
そのことをクニオシ王に告げると
彼は大変喜んで
長男に英才教育を施した

#クニオシ 9
クニオシの長男は
心身共にすくすく育ったが
1つ気がかりなことがあった
宮の西の葛城山には喜んで出かけるが
東の三輪山には行こうとしない
行くのを怖がっている
三輪の神が恐ろしいらしい
これは王になったときに
問題の種にならなければ良いが
とクニオシは憂いた

#クニオシ 10
クニオシは25歳で王となり
健康に長期政権を築くかと思われたが
元々あまり丈夫でなかったようだ
9年ほど王を務めて
34歳で薨った
重臣だった先王カエシネの子たちも
同じ頃に亡くなり
宮の顔ぶれが一気に刷新されることになった
磯城一族の推挙もあり
長男のフトニが王に就いた

次王の話に続きます

カエシネ(孝安天皇)のお話

第5代孝安天皇のお話です。(間違いではありません)
スキトモの子が幼少のため代行で磯城一族から王になった人です。代行と言っても後世には直系の王にされてますが…記紀の記述と比べて、孝安天皇孝昭天皇の順序、和風諡号は入れ替わってます。
会話・心情は創作ですが設定・背景は事実だと考えてます。

#カエシネ 1
イワレヒコ×磯城の女の血を絶やしたくない
という磯城一族の執念により
太真若彦、長姫両社の弟、カエシネは
王の代行をすることになった
尊称としてミマツヒコと名付けられた
かつてイワレヒコを苦しめた長脛彦は
実の尊称がミマツヒコ
その名は磯城一族の名誉ある名前だった

#カエシネ 2
カエシネは王の地位に
さして興味は無かったが
経営の才はあった
まずは白橿原宮から離れた
葛城山の麓、秋津島に宮を設けた
秋津島は難波に出る道
紀(伊)に出る道
が交わる交通の要所であり
そしてイワレヒコのように
紀(伊)から来る賊を撃退する守りの拠点だった
人の往来が盛んになった

#カエシネ 3
この頃
北の生駒・奈良あたりは
まだ原ヤマト国の版図には入ってない
奈良盆地の南半分をしっかりと押さえ
東に宇陀、さらに伊勢
北西に難波
南西に紀伊
との交流を盛んにして国の充実を図り
次代以降に奈良盆地北半分を手中に収める
という青写真を
カエシネは頭に描いていた

#カエシネ 4
カエシネは王に就く直前
先王スキトモの兄オキシミミの娘
天豊津姫を妃に迎えた
自身はイワレヒコの男系の血は流れてないが
姫は男系の血が流れている
代行とはいえ王を継ぐ事に
宮臣の了解を得やすくする為であった
姫の気位は高かったが
カエシネは直ぐに見込まれ
夫婦仲は良好だった

#カエシネ 5
二人の間には3人の子があった
イズキヒコ、タケタツミ、ワチツミ
イズキヒコからは後の
彦坐命、吉備津彦命、八綱田命(毛野君祖)
という有名氏族が出る
カエシネは在位中は代行の王という
立場を崩さなかったが
後世になると普通に「王」であったとされ
彼ら子孫は皇族将軍と呼ばれた

#カエシネ 6
皇族将軍(四道将軍)は後の崇神天皇の頃の
ヤマト王国の爆発的な版図の拡大に
大いに貢献した
しかし急激に大きくなりすぎた王国は
かえって
イワレヒコの子孫の王権を弱くする
原因にもなっていった
カエシネ本人には何の落ち度もないが
そういう根っこを
生じさせた(代行の)王だった

#カエシネ 7
カエシネは
18の歳で(代行の)王に就き20年経った時
先王スキトモの子も20歳になり
大人になったので
宮臣たちは譲位を勧めた
しかしカエシネは
あと5年王を務めさせてくれ
と懇願した
自身の構想が形になるまでまって欲しいと
言った
決して権力に執着した訳では無かった

#カエシネ 8
さらに5年が過ぎ
カエシネは
経済政策など自分の構想がほぼ実現できたので
25歳になった先王の子に王位を譲った
25年間王として自分が目指した事
次なる王に継いでほしい事
カエシネの息子が親王の補佐に就く事
などを引き継いで
静かに宮を去った
次なる王はクニオシ
という名だった

次王へ続きます。

スキトモ(懿徳天皇)のお話

第4代懿徳天皇のお話です。イワレヒコの孫ですが、父親はxxxなのです。会話・心情は創作ですが設定・背景は事実だと考えてます。
ちなみに懿徳=美徳の意です。

#スキトモ 1
兄オキソミミは政治に、王になることに
全く関心を示さなかった
イワレヒコ王国では
磯城の妃から生まれた長男は
不思議と王位を継がず
宮中で大成したものは出ていない
オキソミミはそのことに不安を感じ
タマテミが薨った時
日頃から政治に興味を示す
弟スキトモに王を継ぐことを勧めた

#スキトモ 2
というのは大間違いで
実際はスキトモの方が年上で
オキソミミは長子であるが兄では無かった
どういうことか?
スキトモは
アクト姫がタマテミの妃となる前
ヌカワミミとの間に生まれた子であった
タマテミには伏せられていたが
薨ると同時に磯城一族が
スキトモが王位継承者だと主張した

#スキトモ 3
もう長老の磯城の棟梁・黒速が
イスズ姫の後継を絶やしてはならぬ
とばかり王の跡継ぎに口を出したのだ
イスズヨリ姫の孫のオキシミミは
何でだ!と不満たらたらだったが
一族棟梁の言うことに逆らう気はなかった
反乱も起きずスキトモが王に就き
白橿の宮の近くに
軽之境岡の宮を設けた

#スキトモ 4
スキトモはオキシミミを嫌いでは無かった
ずっと一緒に遊んでたから
(異父弟でなく)実の兄弟のように思っていた
だが長老には従わねばならない
スキトモはオキシミミの上に立ったが
第一の家臣として
国の舵取りについて色々と
オキシミミに相談して国を治めた
安らかな時代であった

#スキトモ 5
スキトモは
磯城一族の長老・黒速の子で
現棟梁の葉江(ヌカワミミ・タマテミ世代)
さらにその子の若棟梁・太眞若の妹の長姫(太眞若姫)を
棟梁・葉江の指令で
妃として迎えた
スキトモは至って健康であり
長姫も丈夫な女性であって
すぐに玉のような子が出来る
と周りは期待していた

#スキトモ 6
しかし何年経っても玉のような子は産まれない
スキトモは長姫に
どうすれば子を授かるだろうか?
と問うた
長姫は遠慮しながらも
私たち一族が崇める三輪の神を
王が崇める天照大神のそばに
侍らせれば
二人の子ができるのではないでしょうか?
と答えた
そうかも
とスキトモは応えた

#スキトモ 7
天照大神と三輪の神を共に迎えて
スキトモの妃・長姫は
初の男児を授かった
王の喜びはひとしほだったが
それは王になってから20年後の事であった
安定の時代だったが長すぎた
男児が生まれて入れ替わるように
王は病になり
死の床に就きそのまま永眠してしまった
磯城一族は大混乱だ

#スキトモ 8
スキトモの男児は生まれたばかり
形式上兄のオキシミミには女児のみで
男児はいなく
王を継ぐ者が不在の状況
磯城一族の3代目棟梁・太真若彦は困ったが
宮臣を集めて会議すれば
意外な人物が推される危険もある
ここは
王の遺言で次の者を決めた
という体裁にしなければ…

#スキトモ 9
困っている太真若彦に妹・長姫(太真若姫)は
私がお助けしましょう、という風で言った
我が子が成人し王に就くまで
私達の弟・タギシヒコに王の仕事を
してもらいましょう
いえ、イワレヒコの男系子孫では無くても
私達の母がイワレヒコの血を継いでますから
決して変ではありません

#スキトモ 10
太真若彦は妹・長姫の提案に
それなら宮臣も賛成するかもな
と妙に納得して受け入れた
宮臣を集め
先王の和子が成人して王になるまでの間だけ
という条件で賛同してもらった
5代目にして初の
イワレヒコ男子直系で無い
かりそめの王が誕生した
諱をとって
ミマツヒコカエシネと呼ばれた

※漢風諡号で言えば、第4代懿徳天皇-第5代孝安天皇-第6代孝昭天皇記紀とは順序が入れ替わってますが、これが正しいのです。

タマテミ(安寧天皇)のお話

第3代安寧天皇のお話です。イワレヒコの子であり、ヌカワミミ(綏靖天皇)の異母弟です。会話・心情は創作ですが設定・背景は事実だと考えてます。

#タマテミ 1
母イスズヨリ姫は姉のイスズ姫と
ほぼ同時にイワレヒコの妃となり
ほぼ同時に懐妊した
なのでタマテミは
ヌカワミミが薨れた年齢と
ほぼ同じ年齢で王に即位した(24歳頃)
即位前は
母に夢中だったヌカワミミと
仲良く一緒に遊ぶこと無く
年上の部下と共に
狩りや異族平定を楽しんでいた

#タマテミ 2
磯城津彦という尊称が付いている通り
タマテミは当初、磯城一族の宗主になるはずだったが
ヌカワミミが若くして薨ったため
そのままの名で王に就いた
しかし政治、財政、警備などの
帝王学は中途半端なままであり
国を治めるよりは
出かけて周辺の蛮族を平定する方が
好きで得意であった

#タマテミ 3
タマテミが王になった時
王国の版図は北西に少し広がったので
イワレヒコの白橿原宮より北西の
片塩の地に新たに宮を造った
そしてそこに
ヌカワミミと恋人のような関係だった
ヌカワミミの妹を妃として迎えた
諱はヌナソヒメ、妃としてはアクト姫と呼ばれた
やがて2人の子供が出来た

#タマテミ 4
タマテミとアクト姫との子は
兄がイロネ、弟がスキトモと名付けられた
兄は成人してオキソミミという尊称をもらったが
なぜか王を継がず
弟がスキトモノミコトの名で王に就いた
タマテミは10年ほど国を治め
34歳で薨った
王国は発展はしなかったが
穏やかな気候で収穫が増え国力は増した

短いですが終わりです。第4代懿徳天皇のお話へ続きます。

ヌカワミミ(綏靖天皇)のお話

本当は次はタギシミミの執政が入りますが、次代天皇のヌ(ナ)カワミミ(綏靖天皇)のお話です。会話・心情は創作ですが設定・背景は事実だと考えてます。

#ヌカワミミ 1
(記紀ではヌナカワミミですがお話の中ではヌカワミミです)
イワレヒコ(神武天皇)を継いだのは
タギシミミ
山本の国を勝ち取った王ではなく
伊都国から呼び寄せられた王
そんな人に磯城を含むこの国を
支配して欲しくない
黒速もイスズ姫も
息子ヌカワミミも
日に日にその思いは募った

#ヌカワミミ 2
建国の功臣たちと共に苦労してないながら
タギシミミは上手く国を治めた
ヌカワミミの兄のヤヌイミミが
タギシミミと仲が良いこともり
彼はヤヌイ、ヌカワに王位を譲ることなど
眼中にない
嫂婚制により神武の妻を我妻としたが
イスズ姫姉妹が子を授かり
その子が王位に就く保証はない

※嫂婚制(そうこんせい)…天孫族の祖、遊牧騎馬民族は王の死後、王の息子が王の妻を自分の妻とするしきたり。

#ヌカワミミ 3
それが分かったので
黒速・イスズ姫は
タギシミミを亡きものにしよう
と決めた
イスズ姫は当然黒速が刺客になってくれると思ったが
彼はイワレヒコの生前の喜びの顔を思い出し
渋い顔をした
イスズ姫は言った
兄上(兄磯城)との誓いを忘れたの?
黒速は正気に戻り今夜実行すると言った

#ヌカワミミ 4
黒速・イスズ姫はヤヌイ・ヌカワの兄弟に
これから行うことを明かした
ヤヌイミミは震えて泣きそうになっていた
黒速が決してタギシミミには言うな
と念を押した
ヌカワミミは兄を蔑むような眼で見ながら
微笑みでイスズ姫を見返した
今宵はイスズ姫が王のお相手をする夜だった

#ヌカワミミ 5
翌朝領内を見て回る予定だったので
タギシミミは寝所に入り早々と眠りについた
イスズ姫はそっと寝所を開き
黒速を招き入れた
寝息を立てる王・タギシミミの傍らに立ち
黒速は神に祈るように目を閉じたのち
キラリと光る短剣を両手に持って振りかぶる
その時タギシミミが目を開いた

#ヌカワミミ 6
固まった黒速を見ながらタギシミミは口を開いた
昼間ヤヌイミミの様子がおかしかったから
何かあるかも、と思っていたが
こういうことか
と静かに言い
私を殺すことが父・イワレヒコの望むことなのか?
と問う
黒速は頭を振りながら
違うと思います
と応え短剣を下ろしその場に崩れた

#ヌカワミミ 7
殺意の消えた黒速を失望の目で見ながらも
イスズ姫は、ここまでか、と諦めかけていた
タギシミミは安堵の色を浮かべ
磯城一族の処分を考え始めた
が、その時
黒速・イスズ姫の間を何かが通り抜けた
そして王の体から血が噴き出し
突進した物体が真っ赤に染まった
王に短剣が刺さっていた

#ヌカワミミ 8
真っ赤に染まった物体
それはまだ子供の体をしたヌカワミミだった
誇らしげな顔をして
黒速・イスズ姫を見返した
小鬼のような顔だった
もう今からではタギシミミは助からない
介錯をする意味で
黒速は自らの短剣でとどめを刺した
わずか半年ほどでタギシミミの治世は閉じた

#ヌカワミミ 9
叔父上がノロノロして役立たずだから
吾が手を下したんだよ
母上、褒めて!
と無邪気にヌカワミミは言う
母も満面の笑みでそれに応える
この二人を見てると
もしか、私は恐ろしい計画をしてしまったのか?
という後悔が黒速の心を占めた
しかしその思いにとらわれている時間は無い

#ヌカワミミ 10
タギシミミの死、ヌカワミミの血を浴びた姿を
宮臣にどう説明しよう?
と黒速は新たな悩みを抱えたが
イスズ姫が思いのほか速く
宮臣を集めて報告した
王タギシミミは子供のヌカワミミを
寝所に呼びつけ殺そうとしました
やむなくヌカワミミは応戦し
不幸にも王を葬ってしまったのです

#ヌカワミミ 11
イスズ姫の報告を疑う宮臣はいなかった
排除しようとして殺されたなら仕方いよな、と
さらにイスズ姫は声をあげた
不運が訪れたといえ
我々は次なる王を決めなければなりません
我が子、ヤヌイミミはどうでしょう?
宮臣は皆異存無かった
しかし
ちょっと待ってください
と言う者がいた

#ヌカワミミ 12
他でもない、それは
ヤヌイミミだった
吾は…吾は…タギシミミの跡は継げません
本当のことは言えず
肩を、声を震わせながら言った
しかし宮臣たちは
タギシミミに襲われて
怖かったので震えてるんだろう
と勘違いしていた
そしてヤヌイミミの言葉を待ってたように
イスズ姫は言った

#ヌカワミミ 13
では
ヤヌイミミが正気に戻り
継ぐ気になるまで
弟のヌカワミミに
代わりを務めていただきましょう
とイスズ姫
ヌカワミミは
兄のことなど全く気にせず
承諾の意味で、母に満面の笑みを浮かべた
ヤヌイミミは
何か気持ち悪いものを見た気がして
その場を去った
もうここには居たくない

#ヌカワミミ 14
タギシミミの殯もそこそこに
ヌカワミミが王に即位した
まだ子供の王であったが
磯城一族がバックにいるから
宮臣たちも以前と変わらず王に仕えた
ただ実際は母イスズ姫の傀儡で
王よりはイスズ姫の機嫌を伺う日々
やや意外なことに
王は母ではなく、自身の妹を愛し
寝食を共にしていた

#ヌカワミミ 15
母イスズ姫はヌカワミミを
息子として以上に愛すことは無かった
だからヌカワミミは
イスズ姫の面影を残した妹を
自身の妻のように愛した
もちろん正妃とすることはできず
また血が濃すぎるため子は育たなかった
王の血統は叔母イスズヨリ姫の子タマテミ
に移っていくこととなる

#ヌカワミミ 16
ヌカワミミは父やタギシミミの白橿原宮
ではなく
磯城一族の本拠地である
三輪山の麓に宮(皇居)を設けた
そこで自身が権勢を奮うことは無く
母イスズ姫、そして黒速が
イワレヒコ王国の盤石な基礎を築いて行った
ヌカワミミは16才で即位し
8年後の24才で薨った
早すぎる死であった

※綏靖(すいぜい)天皇の宮は葛城高丘宮(今の御所市)では無かったと考えてます。(「葛城」というのも誤って伝えられてると)

#ヌカワミミ 17
ヌカワミミの兄ヤヌイミミは
慕っていたタギシミミが
一族の陰謀で亡き者にされたことに失望し
また亡き王を弔うために
伊都国に旅立ち
タギシミミの母に
亡くなったことを報告した
そしてヤヌイミミはそのまま伊都国で暮らし
その地で妻と子を得て
穏やかで平和な余生を過ごした

これでヌカワミミ(綏靖天皇)のお話は終わりです。
次からタマテミ(安寧天皇)のお話ですが、次天皇からしばらくは家系的な話だけで、短くなると思います。

イワレヒコ-神武東征 第4部「決戦~即位~完」

東征完了後は、イワレヒコ王国=初期大和王国の物語に移っていきます。

#イワレヒコ 61
丘の上で剣をかざすと何が起きる?
イワレヒコは怪訝に思ったが
ゆっくり考えてる暇はない
もう運を天に任す!
と腹をくくり、自軍が左展開するのを見ながら
周りから良く見える丘に上がった
すると右の方(敵左翼)にウマシマチの一隊が
じっと様子をうかがってるのが見えた
そうか!

#イワレヒコ 62
左翼でじっと様子を伺っていたウマシマチ
突破口を開けないイワレヒコ軍を見て
寝返らなくて良かったかな
と結論を出そうかと思ってた矢先
不意に丘の上に光るものを見た
イワレヒコが白く光る剣をかざし
周りを鏡で囲んだ光のヴェールを見た
ウマシマチは神を見た!と思った

#イワレヒコ 63
吾はこの人に附いて行く
直感的に思ったウマシマチ
理由はない、ただそう思った
そしてミマツヒコの部隊に突進していった
イワレヒコの右の方から左動く
ウマシマチの部隊を見て
イワレヒコは確信した、勝てる!
一時もしないうちにミマツヒコは捕えられ
イワレヒコの前に差し出された

#イワレヒコ 64
ミマツヒコ(長脛彦)は
キッとイワレヒコをそしてウマシマチを
睨んでウマシマチに言った
叔父の吾をなぜ裏切る!
お前は何がしたいのだ!
父・ニギハヤヒに申し訳ないと思わんのか!
ウマシマチは
すみません
父と同じ天孫のこの人が
中洲に王国を建てる未来を夢見たのです
と応えた

#イワレヒコ 65
ウマシマチの懇願で
ミマツヒコは中洲を追放されることになった
呪詛の言葉を吐き何処かへ去るミマツヒコを見ながら
イワレヒコはこの旅の終わりを感じた
完了して王国建設を始める為には
まだまだすべきことがあるが
伊都の故郷を
兄イズセを思いながら
吾は成し遂げましたよ
と呟いた

#イワレヒコ 66
イワレヒコ!感慨に浸るのはまだ早いっすよ
珍彦、タグリヒコ、ニウヒコ、エヒコ、オトウカシ、オトシキ
が周りを囲んでイワレヒコに言った
そうだな、まだ押さえなければいけない
邑や一族があちこちにいる
中洲統一のためにもうひと頑張りだ!
少し離れてウマシマチも頷いていた

#イワレヒコ 67
イワレヒコ王と親衛隊たちは
奈良盆地にあった大和湖に沿って
南から西・北・東と順に
素直に従わない邑・一族を平らげていった
そして最初の南の地
土を採取して神捧げる器を焼いた天香久山が良く見え
後に畝傍山の守りのある白橿原に
王の館を建てた
イワレヒコ26歳の年だった

#イワレヒコ 68
オトシキの又名を黒速(クロハヤ)と言う
黒速はミマツヒコ(長脛彦)との決戦に
勝利してから考えていた
兄・エシキと生き残った方が磯城の家系を継いでいこう
と二人で決めたこと
生き残った自分が継いでいくためには…
イワレヒコと共に子孫を繁栄させる
それがベストな方法だ、と

#イワレヒコ 69
黒速(オトシキ)はイワレヒコに言う
国を構え宮を構え次はお妃さまですね
吾が王に相応しい美女を連れて参ります
するとイワレヒコは
いや、元の国に嫁と息子がいるんだ
ここに呼ぼうかと思ってる
側女で良いなら見たいが…
と予想もしてなかったことを言った
これはヤバい、と黒速

#イワレヒコ 70
結局イワレヒコの故地に居た嫁は来ない
息子タギシミミ、キスミミは来る結果になり
黒速の構想は崩れながらも
将来に一縷の望みをつないだ
とりあえず吾が家の女子を妃にして
息子を設ければ
その先はどう転ぶか分からない
何とかなる!と
黒速の妹をイワレヒコに紹介する事にした

#イワレヒコ 71
黒速の妹はイスズ媛
美人ではないが人見知りせず
可愛がられるタイプ
イワレヒコのどストライクかは不明も
気に入った様子で間髪おかず妃にすると表明
白樫原の宮が完成し息子タギシミミも到着したので
王の即位式とイスズ正妃(皇后)との祝言を挙げた
イワレヒコの夢見た瞬間だった

#イワレヒコ 72
奈良盆地の南半を支配地として
王に就いたイワレヒコ
九州・伊都国から息子のタギシミミを迎え
彼を自分の後継に据えるつもり
と周りから聞いた黒速は
これはいかん!
と焦った
イワレヒコに嫁がせた妹のイスズ姫に
1日も早く男子を産みなさい
と言った
イスズ姫は微笑みながら頷いた

#イワレヒコ 73
かと言って
イスズ姫からイワレヒコにアピールはせず
いつも宮の中で明るく微笑んで
楽しく過ごしていた
それが逆にイワレヒコの恋心を刺激した
イスズ姫を寵愛した
数年のうちに3人の子が出来た
3人ともすくすく成長した
しかしタギシミミを後継とするイワレヒコの心は変わらなかった

#イワレヒコ 74
イスズ姫はヤヌイ、ヌカワの2人の男の子と
1人の女の子を産み育てた
ヤヌイは不思議とタギシミミになつき
タギシ兄と呼んで仲良くしていた
母イスズ姫は自然と弟のヌカワを可愛がり
貴方はタギシミミより偉いのよ
成人したら貴方が王になるのよ
と夫の意に反した帝王教育を施した

#イワレヒコ 75
そんな妃・イスズ姫や後ろ盾の磯城一族・黒速の
黒い野望など露知らず
畝傍山の麓の宮を
天孫族のルーツである邪馬台国のある
山本の地名を拝借して山本の宮
治める国を山本の国と呼んで治めた
これが後にヤマト王国と呼ばれる
またイスズ姫の妹のイスズヨリ姫も妃として迎えた

#イワレヒコ 76
イワレヒコは山本の国を得て
それで十分に満足し
国を広げること無く
しかし建国の功臣たちの協力の元
国をしっかりと治め
26才で王位についてから20年程王の務めを果たし
46才の時天寿を全うして
息子のタギシミミに位を譲った
イワレヒコは伊都国王家の血統が
永続すると思っていた

引き続きヌ(ナ)カワミミ(綏靖天皇)物語になります(続く)

イワレヒコ-神武東征 第3部「中洲突入-決戦」

おさらいです。出発地は筑紫・伊都国(糸島市)、難波から紀伊水門を経由し、紀ノ川遡上~吉野~宇陀~橿原が正しい東征のルートと考えています。

#イワレヒコ 41
イワレヒコ一行は早速近くの高倉山に登り
中洲の方向を見渡した
オトウカシの情報通りあちこちの山腹砦に
煙が立ち上るのが見えた
珍彦は言った
敵はまとまると強大っすよ
ここは静かに近づいて行って
各個撃破!そのためには策を弄する必要ありっす
イワレヒコもそれに異存は無かった

#イワレヒコ 42
イワレヒコは動き出す前に願をかけておきたかった
オトウカシに聞いた
中洲で1番近い聖なる山は?
答えは
あそこにポツンとあるなだらかな嵩山(天香山)です
ならその山のものをとってきて欲しい、そうだな、土を
人選は敵地に入って行くので
珍彦と道案内としてオトウカシになった

#イワレヒコ 43
珍彦は爺さん、オトウカシは婆さんに変身した
あまりに似合いすぎてイワレヒコたちに爆笑されたが
これなら敵にバレまい
二人はまる1日かけて山の土をとって戻ってきた
そしてその土で捧げ物を盛る器を作り
流れの清らかな川でこの地の神と天孫の神に祈りを捧げた
これで望みは叶う!

#イワレヒコ 44
イワレヒコたちは慎重に前進し国見ケ丘に差し掛かる
偵察により
敵の女軍には名草の女性兵士を
男軍には珍彦の配下の兵士を
それぞれ当たらせ
残りは伏兵として途中から一気呵成して
雌雄を決した
会心の勝利で気を良くしたイワレヒコに
ニウヒコ(道臣命)が進言した

#イワレヒコ 45
ニウヒコ(道臣命)は
山を降りて磐余の兵を我々の女兵隊が
おびき寄せますので
残りの兵を東から廻して
挟み撃ちにしてはどうでしょう?
と言う
イワレヒコは賛成だったが
その前に磐余の磯城兄弟を味方につくよう
誘ってみよう
と返した
その交渉にエヒコ(八咫烏)が赴いた

#イワレヒコ 46
エヒコ(八咫烏)が磯城兄弟を訪れイワレヒコの意向を伝えた後
兄弟は話し合った
今日が吾達の、磯城氏族の
運命の分かれ道かもしれんなぁ
だから弟よ、どちらに転んでも磯城が滅びぬよう
二人は袂を分かとう
兄は残って中洲連合を支える
弟はイワレヒコに従え
それで磯城は生き残る

#イワレヒコ 47
磯城兄弟の敵味方分かれる返事に
少し違和感感じながらも
イワレヒコは磐余支配のために進軍を始めた
オトシキ(弟磯城)は山側で後詰待機していたが
こちらの囮女軍にエシキ(兄磯城)達が突っ込んでくるのが見える
ここでイワレヒコを裏切って兄側に付けば
兄は勝てるだろうか?

#イワレヒコ 48
そうオトシキが思った瞬間、イワレヒコが
今だ!包んで殲滅しろー!
と号令し、弓部隊がブンブンと弓を射る
イワレヒコ軍団には若さと勢いと力強さと未来がある
そして自分もその中で活躍するビジョンを見てしまった
オトシキは寝返るのを止め
許せ!と呟きながら兄の軍に突進した

#イワレヒコ 49
イワレヒコはエシキの軍を蹴散らし
磯城を、磐余を制圧し平野に出る権利を得た
この地を支配し連合の一員としてスタートする
のもありかも
と一瞬思ったが
兄イズセの無念を晴らさなければ
そして今自分に付いてきた非主流派の人々に
夢を与えなければ
だから長脛彦との決着をつける!

#イワレヒコ 50
オトシキ、オトウカシ、エヒコ(八咫烏
ニェモ、イヒカ、イワオ
ニウヒコ(道臣命)、タグリヒコ(高倉下命)、珍彦
彼らのためにもイワレヒコは
この中洲の王とならなければならない
そしてこの地を伊都国のように
吾の都としたい
そう兄に誓い
この地の神と天孫の神に祈りを捧げた

#イワレヒコ 51
次の日朝早くからイワレヒコは進軍を始めた
そしてすぐに北からの大軍とぶつかり足を止めた
両軍が対峙したまま互いの長らしき者が前へ出る
吾は中洲連合の代表、ミマツヒコ(長脛彦)なり
吾は西の伊都国王族、イワレヒコなり
お互いいきなり戦をせず
交渉することにした

#イワレヒコ 52
イワレヒコ!中洲連合の一員となるか
それが不服なら、西に帰れ
吾たちの平和を妨げるな
とミマツヒコは言う
兄を殺した奴の仲間になれるか
とイワレヒコは思ったが
敵軍の中に同じ色・形の弓矢を靭に収めた一軍を見つけ
不意に気が変わった
考え直して明朝来る
とミマツヒコに言った

#イワレヒコ 53
あれは西から来た者の兵に違いない
名は何という?
イワレヒコはオトシキ、オトウカシに問うた
彼らは応える
親父の代にニギハヤヒと言う人が現れ
あっという間にこの中洲をまとめ上げ
連合を組織しました
今はウマシマチという孫が継いでいます
ニギハヤヒかぁ
イワレヒコは呟いた

#イワレヒコ 54
ニギハヤヒかぁ
良く知らんが吾達天孫から早くに
分かれた人なのかなぁ、仲間にしたい
エヒコ!
ウマシマチを訪れ
吾が王族に仕え天孫の名を世に広めぬか?
と問うてくれ
イワレヒコはエヒコに命じた
すると珍彦とタグリヒコが
それに附いて行くと申し出た
何か秘策があるのか?

#イワレヒコ 55
…と申しております
ウマシマチを訪れたエヒコが言った
だがウマシマチはあまり浮かぬ顔だった
天孫のプライドにはそんなに関心は無かったし
それで寝返る気にはなれなかった
不意にタグリヒコが剣をもって近づく
珍彦もキラキラ光る鏡をもって
ウマシマチに詰め寄った

#イワレヒコ 56
私が持つこの素晴らしい剣、とタグリヒコ
私が持つこの美しい鏡、と珍彦
二人は声を揃えて
これらを貴方に差し上げ
これからも貴方に贈り管理していただきます
どうですか?
宝物を間近に
ウマシマチはうっとりと見ていた
それなら寝返るのも悪くないかもな
心の中で呟いた

#イワレヒコ 57
ウマシマチから快諾の返事はもらえませんでした
しかし吾達の提案を聞いた時の目は輝いてました
なので、もう一押しすればいけるかと…
と珍彦はイワレヒコに報告し
耳元で何かを呟いた
イワレヒコは一瞬「えっ?」という顔をしたが
すぐに納得して頷いた
では明朝出陣する!

#イワレヒコ 58
イワレヒコ軍は日の出とともに北西に進み
待ち構えるミマツヒコ(長脛彦)軍と対峙する
イワレヒコ!吾達の連合に加わらねば
お前たちを殲滅するぞ!
とミマツヒコ
吾を信じて付いてきた者のために
吾はこの地の王となる
服従はせぬ!
とイワレヒコ
戦いは不可避と知り正面から戦闘開始

#イワレヒコ 59
正面から
と言ってもがっぷり四つでは
ミマツヒコ軍の物量に負けてしまう
そこはヒット&アウェイ
押したり引いたり
で、相手を揺さぶろうとするが
自信満々のミマツヒコは
デンと構えて揺さぶりには応じない
このままではじりじり押されて
時と共に敗色濃厚になる
イワレヒコは焦った

#イワレヒコ 60
どうしよう?
このままでは吾と兄の夢が潰えてしまう
その時珍彦とタグリヒコが現れ言った
イワレヒコ!
わが軍を左側に集めそこから敵を総攻撃しましょう
吾は軍を移動し、準備できたら
あの丘の上で剣をかざし開始の合図をしてくだせー
これが成功するかどうかで
命運が決します

(第4部に続く)